僕の運命は、チョコレートと共に落ちてきた。




なんとなしにぶらぶらと、街を歩いていた平凡な休日が一瞬で非日常のものへ変化した。

「どいてくださーいっ!」

鈴の音のような、可憐な少女の声が聞こえたと思った瞬間、金色に輝く光と少女が頭上から降ってきた。
「!?」
スザクは持ち前の反射神経で少女を受け止めたが状況は掴めないまま、固まってしまう。
「…あら?」
少女もまた予想外だったようで、目蓋をパチパチと動かした。
「大丈夫、ですか?」
「はい、あなたは?」
安否を確認しながら腕の中から少女を放し、支えながら立たせる。
そうして向き合えば声と同様に可憐な、桃色の長い髪と長いスカートを揺らす少女が目の前にいた。
その美少女と呼ぶに相応しい彼女を思わず見つめていると、急に悲鳴のような声を上げられた。
「チョコレートが!」
突然しゃがんで声を上げる少女を見ると、足下には四方八方へ無惨に散らばったもの。よく見れば2cm程度のそれらは、金色の包みに巻かれた―なるほど、チョコレートなのだろう。
「どうしましょう!」
声を上げ背中を丸めてチョコレートを拾う姿は悲壮感に包まれている。
一瞬その小さな背にどうしていいかわからず固まってしまったが、とりあえずチョコレートを拾うのを手伝だった。

せっせと手を動かす彼女を横目に眺めながら、健気だな、と思う。
「チョコレート好きなんですか?」
スザクが何気なくした質問に勢いよく振り向くと。
「はいっ」


どんなチョコレートより甘そうで、とろけるような笑顔を見た瞬間―一人の少年は恋に落ちたのだった。




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