“おめでとう”と言われて素直に喜べないのは…









  and I love you.









久々に一日学業に専念することができ、放課後先生からの呼び出しが終わってスザクが生徒会室に入ったときからそれは始まった。

「すいません、遅れまし…っ」
「ハッピーバースデースザク!」
生徒会の扉を開けたスザクに飛び込んできたのはクラッカーの爆発音、降りかかるのはおめでとうの声。
「え…?え?」
見渡せば笑顔のアッシュフォード学園生徒会の面々。
「今日が誕生日だと言うことはバレているのよ、枢木くん」
刑事が犯人を問い詰めるかのような言い回し、しかし口調は非常に楽しげにミレイは入り口で固まったままのスザクに近付く。
「はあ…」
目の前の事態が飲み込めずに、気のない返事を返してしまうスザク。
ミレイは満足気に瞳も唇も三日月型にすると、高らかに宣言した。

「というわけで、パーティーだ!!」

会長様の合図と共に始まったパーティーは、飲めや騒げやと宴会の如く。
いつものことながらスザクの誕生日パーティーとは名ばかりのお祭り騒ぎであった。
しかし予想外にも(というと失礼だろうか)名目にあった催しもあるようで、シャーリーがプレゼントと称して綺麗に包装された包みをスザクに渡した。
「何がいいのかわからなくて、日常的に使えるのがいいかなと思って」
「ありがとう!開けてもいいかな?」
「もちろん」
シャーリーの笑顔は、裏表のない素直なものだとわかるものでつられて微笑む。
できるだけ無様にならないように包装を開けると青地にストライプ柄の入ったスポーツタオルだった。
「芸がなくて悪いんだけど…」
申し訳なさそうにシャーリーが言うのにむしろスザク自身が申し訳なくなって首を振る。
「ううん!自分じゃこういうのって無頓着になってるから嬉しいよ」
「そういってもらえると助かる」
シャーリーからのプレセントを大事に抱きかかえると、リヴァルがニシシ、と悪い笑みで近寄ってきた。 なんとなく悪い予感だ。
「俺からはコレ、おっとここで開けんなよ!自分の部屋に帰ってから”使って”くれよな!」
意味ありげなウインクと一緒に渡されたものはA4サイズほどのビニール袋。
とはいっても包装されたものではなく…用途がなんとなくわかってしまったので気にしないが、やはり男子高生というところだろうか。
「…ありがとう」
スザクは正直微妙な気持ちであった。何せ今日は恋人の部屋に泊まるつもりであったからだ。
見つからずに持っていればそれでいいが、見られてしまうと何を言われるかわからない。
そこではた、と違和感が訪れた。
「…ルルーシュ…?」
ふと辺りを見回すと見知った黒髪がいないことに気付く。
「ルルーシュならもうすぐ来ると思うぜ」
その言葉に何か用があったのだろうかと首を傾げるとすぐに扉が開く音と件の声が聞こえた。
「会長、できましたよ」
カラカラと音を立てて入ってきたのはケーキの乗った台車とルルーシュ。
「待あってました!!」
その到着に声を上げたのはミレイで、すぐさまケーキとルルーシュに駆け寄っていく。 「駄目ですよ会長。今日の主役はスザクです」
名前を呼ばれたことに意味もなく反応を示すと、スザクを探していたのかルルーシュと目があった。
そのままルルーシュを見ると手招きでされたので呼ばれるままに歩いていく。
「スザク、私からのプレゼントよ!」
傍までいくとミレイが両手を広げてケーキを示す。
「なんですか、それ。作ったのは俺ですよ」
呆れ気味に溜息を吐くルルーシュを何とも思わないのか、陽気なまま続けるミレイ。
「『ルルーシュの手作りケーキ』がプレゼントなの。ルルーシュにケーキを作らせたのは私。よって私からのプレゼント♪」
どんな理屈だ、と誰もがつっこむべき理屈ではあるが、それが我らが会長となれば通ってしまうもので。
「そうですか。…だそうだ、スザク。会長からのプレゼント受け取れ」
「あ、りがとうございます?」
もっと大いに喜びなさーい!とミレイに迫られて困惑するスザクをルルーシュが間に入って仲裁。
他のメンバーはそんな様子に笑って。
そんな風にスザクの誕生日パーティーは流れて行った。





「本当に僕たちだけ良かったのかな?」
パーティーが終わってルルーシュの部屋にやってきたスザクは遠慮がちに声を掛ける。
「どうせあの後も会長は騒ぐだろうし、主役のお前が片付けなどする必要ない」
きっぱりとスザクにそう告げるルルーシュは自分も当然の如く後片づけに不参加だ。
そのことに触れずに苦笑すると、なんとなく心に残っていたことをルルーシュに尋ねる。
「君は言ってくれないのかい?」
「“おめでとう”と?」
意図して避けていたのか、即答したルルーシュ。
ああ、きっとわかっていたのだと理解した。
「そう。…と言ってもピンとはこないんだけどね」
言葉にすると眉を寄せるルルーシュに、言わない方が良かったかと視線を外す。
そう、スザクは自分が生まれたことを喜ばれることに慣れていないのだ。
幼少期はそれこそ首相の息子ということで何やら騒がれたが、実の父からの祝いなどなかいに等しいものだったし、 名誉ブリタニア人となり軍に入隊してからは、誕生日など忘れて過ごしていた。
それを察しているのだろう、ルルーシュは何故とは言わない。
そのかわりふわふわとした茶髪にぽん、と手をのせると、伝う様に頬まで撫でて微笑んだ。
「ルルーシュ…?」
「だったら、もっといい言葉を贈ってやろう」
「いい言葉?」
なんだろう、とスザクが首を傾げると真っ直ぐなアメジストに自分が映っていいるのが見えた。
「愛してる」
言葉と共に自ら顔を寄せると唇を合わせてくれた。
「ルルーシュ…ッ」
自ら愛情表現を滅多に表そうとしないルルーシュが、言葉にも態度にも移したことに感動を覚えて声が震える。
名前を呼ぶ以上に感情を出せなくなっているスザクにルルーシュは続けた。
「生まれたことが喜ぶべきことかなんて誰にもわからない。ただ俺は、お前を愛している。それは本当のことだ」
こんなにも人を愛おしいと思えることがあるのかと思った。
自分の愛する人が自分と同じように愛してくれているという事実に歓喜する。
「でもそれはお前が生まれなかったら言えないことだからな。それは”生まれてきてありがとう”だ」
それは『おめでとう』よりも嬉しく、『おめでとう』よりも、何よりも欲しかった言葉で。
スザクはおそらく初めて『生まれてきて良かった』と思えたかもしれなかった。
「ありがとう。僕も、愛してる。ルルーシュ」
目の前の細腰を抱き寄せて、お礼と称して口付けると素直に応える唇。
それがまたスザクを震わせた。








きっとこんなにも愛に溺れた誕生日など後にも先にもこれっきりだろう―。



















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ナチュラルにナナリーがいなくてごめんなさいorz
わ、忘れて…ました…。ナナリーごめん。
何はともあれスザクさん誕生日おめでとうございました!(過去形)
…短いので時間があったら書き足します←

2012.7.11

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